3)低温菌由来蛋白質の研究
■ 研究の背景と目的
好冷菌、耐冷菌などの低温菌が生産する酵素(低温菌酵素)は一般に低温では常温生物由来酵素より高い活性を示し、その反応至適温度も常温生物由来酵素より低温側にシフトしている。 またいずれの酵素も常温生物由来酵素と比較した場合、熱安定性は著しく低下している。従って、低温菌酵素はその構造安定性を犠牲にして、活性に必要な柔軟性を獲得したと考えられる。しかし、酵素の低温適応化機構は、 まだ明らかにされていない。そこで、低温菌酵素と常温生物由来酵素の構造、活性、熱安定性などを比較することにより、反応至適温度や安定性の違いをもたらす因子(一次構造上の特徴)を抽出・同定し、 酵素の低温適応機構を明らかにすることを目的とする。酵素としては、FKBP22、リボヌクレアーゼH(RNase H)、アルカリホスファターゼ(APase)、などを用いる。 また低温菌としては本研究室で単離されたShewanella sp. SIB1株を主として用いる。
・低温菌Shewanella sp. SIB1株とは?
SIB1株は耐冷菌(Psychrotroph)の一種で、新潟県渋柿集油所坑水サンプルより当研究室で単離された(3-1)。SIB1株は0℃でも生育するが、30℃では生育できない。生育最適温度は20℃である。 SIB1株の16S rRNA遺伝子の配列は、南極海から単離されたShewanella sp. AC10株[Kulakova, L., et al. (1999) Appl. Environ. Microbiol. 65,
611-617]と一致するので、SIB1株は系統発生学的にAC10株と同一と考えられる。
主な研究テーマ
(2)SIB1、MR-1株由来RNase H1の低温適応に関する研究
(3)SIB1株由来アルカリホスファターゼの低温適応に関する研究(2006年以後中断)