English|日本語 
海外FD研修
第2回 FD研修
海外FDプログラム@California State University Fullerton 報告書
生命先端工学専攻 物質生命工学コース 助教 古賀雄一

 FD研修第2陣として、カリフォルニア州立大学フルトン校(CSUF)に平成21年9月21日から10月4日まで2週間滞在し、米国の大学(院)教育に直に触れる非常に有意義な機会を得たので報告する。研修の詳細な内容は他の参加者の報告と重複するので割愛させていただくが、CSUFの大学院教育は大阪大学のそれと比べて非常に進んでいたと思う。

・教育技術

 FD研修の授業でもCSUFの学生に対する授業にしても、人と人の”Interactive”が非常に多かったのが印象的である。教員は学生の様子をよく観察していて、状況に応じて学生にどんどん関わっていく。教室全体に質問したり、机間に入り込んでいって個別に話しかけたり、静かに学生の反応を見ていたり。学生同士のinteractiveも盛んであった。ちょっとした課題をグループに割り当てたり、時間をとって学生同士で話し合いをさせたりする。やり方はさまざまであったが、学生の理解度を推し量りながら授業のペースを調整し、学生の注意力を終始授業に向け続けるのに効果的であった。

 プレゼン技術についても習うべきところが多かった。プレゼンの構造(Structure)や流れ(Sequence)に一定のルールがあることや、効果的な導入(Solid Introduction)や聴衆の注意を引くための技術(Attention Grabbing)など、研究発表の際にも有効だと思われ、日本人が海外でプレゼンするときに欠けているものを思い知らされた。

 英語についても、単語の発音に留まらない、日本人が英語プレゼンで注意すべきポイントがたくさんあることが分かった。話のリズムやスピード、音の強弱、そして体の使い方など見逃していた要素を意識できるようになった。

・デジタルデバイスの活用

 米国だからというのもあるだろうが、デジタルデバイスが非常に有効に活用されていた。すべての教室には、オンラインPCと映写システムが完備されており、教員は自分のポータルページにアクセスすることで必要な教材をスクリーンに取り出せるし、webにもアクセスできる。授業のシラバス、教材、連絡事項などはBlack Board システムで管理されており、学生も教員もどこにいてもアクセスが可能である。学生はコーヒーショップの前の芝生の上からラップトップ、PDAなどで教材やハンドアウトをダウンロードしたり、課題を提出したりできる。

 クリッカーを使ったPersonal Response System(PRS) も印象的だった。その詳細は第1回FD参加者の報告の通りであるが、学生と教員のinteractiveを促進するのに非常に有効で、授業の効果を上げるのに役立つこと請け合いである。すぐにでも阪大で導入したいデバイスである。

 

 今回のFD研修を通して感じたことは、効果的な教育のために必要な要素は“Credibility(信頼)とResponsibility(責任)”ということであった。Credibilityとは教員に対する「信頼」「信用」であり、これは教授の肩書だけで保障されるものではない。専門知識はいうに及ばず、授業中の学生との接し方や準備の仕方、話の面白さや、人間性、果ては英語の発音まで、「教師」として信頼できるかどうか、学生はよく見ている。教師が信頼されていれば授業は効果的に運営される。Responsibilityとは、「学生の責任感」である。学生は自分自身を教育することに責任を持っている必要がある。CSUFの学生は登録した講義の数に応じて授業料を支払っているためか、学生は授業や教員をよく吟味しているし、登録した以上はでできるだけよい成績をとろうと一生懸命で、膨大な量の宿題や予習を欠かさないし、Office hourの教員を捕まえて積極的に質問もする。その強いモチベーションが授業を一方通行にせず効果的な教育につながっている。Credibility とResponsibilityが阪大に足りない部分でもあると感じた。

 本研修への参加で初めて「教師」としての訓練を受け、実に有意義であったと思う。工学研究科の教員の多くは優れた研究者であるが、教師としてのスキルは我流自己流なのではないだろうか。阪大の教育の未来のために、こうした研修制度は広く活用されるべきだと思う。それにしても10何年ぶりに学生生活は新鮮で楽しかった。

 最後に本研修への参加をサポートしていただいた、金谷茂則教授、松本玲子氏、CSUF現地スタッフに深く感謝の意を表したい。

 

授業(生物学実験)で2週間交流した学生、TAと