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海外FD研修
第2回 FD研修
第2回 カリフォルニア州立大学フルトン校FD研究報告
2009年10月7日

生命先端工学専攻 助教 久木一朗

 2009年9月21日より10月4日までの間、カルフォルニア州立大学フルトン校(CSUF)を訪問し、海外FD研修を受講した。本プログラムの目的のひとつは、大学院博士課程の国際化を促進するため、我々教員が授業や演習を英語で効果的に行える能力を、まず養うことである。本研修は、CSUFの学部あるいは大学院の授業参観、ホームルームと呼ばれる教育学に関する授業、英語の発音およびプレゼンテーションスキル向上のためのクラスを2週間に渡って受講し、そして最後に、習得したスキルを実践するために学生の前で授業あるいはプレゼンテーションを行うという充実したものであった。

 いくつかの授業を参観して驚いたことが3つあった。まず、200人もの学生が受講する授業においても、先生と学生とのやり取りがたいへん活発であること。先生から学生等への質問の投げかけは10分に1回はあるし、学生から先生への質問も頻度も高い。先生の質問の多くは、Why? What? How?で始まるため、学生はYes/Noでは即答できず、しばし考える必要が生じる。学生は周りの学生と議論する時間を与えられたりもする。選択肢のある質問の場合は、Personal Response Systemという端末を通じて各学生が答えをインプットすると、プロジェクターで集計された結果が映し出され、学生の理解度が即座にフィードバックされる。2つめは、このようなシステムゆえ、居眠りをする学生はほぼ皆無であり、携帯電話いじりに興じる学生も極めて少ないことである。そして3つめは、しかし、学生に考えさせ議論させる時間が長いため、一回の授業で教授する内容が極めて少ないことである。これらは、私がこれまで経験してきた日本での大学の授業とは全く正反対のものである。しかし、両者を比較してどちらが良いかを判断するにはあまりにも情報が断片的すぎたため、結論を急がず、以後の考える糧にしたい。

 ホームルームでは、教育というものを再確認する良い機会になった。見学した授業を例にしてどの様に授業を行うかを、active learningの観点から議論した。学生主体の授業形式を取り入れることの重要性や問題点が、明らかになった。

 英語の発音およびプレゼンテーションスキルのクラスは、ダイナミックで印象的だった(担当先生のキャラクターによるところが大きいが)。日本人が話す英語とネイティブが話す英語の違いを認識し、どこを意識して話すべきかを学んだ。愕然としたことは、小学校で習うような容易な文もアクセントや抑揚がそれらしく聞こえるように話すことは難しい、ということである。また、聴衆を惹きつけ、内容を理解してもらうためにはどうすべきか、このクラスは大変参考になった(実際、彼女のクラスでは眠くならず、話に集中できた)。学んだスキルが、最後に行ったプレゼンテーションに活かされていたかどうかは、これから撮影されたビデオを見て検証したい。

 今回の海外FD研修で学んだことは、英語の授業だけでなく日本語の授業にも十分生かすことができる大変価値あるものである。Active learningという新しい授業のコンセプトを取り入れ、魅力ある授業が行えるよう今後努力したい。

 末尾ではあるが、このように教育を学ぶ貴重な機会を与えていただいた金谷茂則先生、手続き等でお世話いただいた松本玲子氏、CSUFのプログラムスタッフ一同、およびメンターとしていろいろアドバイスいただいたProf. Dr. K. Kantardjieffに感謝申し上げる。