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海外FD研修
第2回 FD研修
海外FD研修報告
生命先端工学専攻 物質生命工学コース 渡部平司

 平成21年9月21日から10月2日の期間、金谷茂則教授をリーダーとして昨年度から実施されている国際連携大学院FDネットワークプログラムの一環として、米国カリフォルニア州立大学フルトン校でのFD研修に参加した。本研修は英語を母国語としない教官を対象として、英語で授業や演習を行うためのスキルを獲得すると共に、米国での教育方針を学ぶことを目的としている。

 これまで国際会議等で英語での講演やセミナーを数多く行ってきたが、語学力の向上や授業の進め方について本格的に学ぶことは小職にとってはじめての経験であり、非常に密度の濃い2週間を過ごすことが出来た。研修は主に、発音やプレゼンテーションスキル向上を目的としたクラス、米国での教育方針などについて議論するクラス、そして指導教授のクラスオブザベーションと同クラスでの模擬授業から構成さている。発音の訓練については、日本人の癖を熟知したプログラムが用意されていた。2週間の限られた期間では、長年染み付いた癖を克服することは困難ではあるが、日本語との根本的な違いを認識することが出来た。またプレゼンテーションスキルに関しては、米国流のインパクトを重視した手法に加え、特に若い学生を対象とした講義の進め方のポイントについても紹介があり有意義であった。またグループ討議では、学生の気質も含めて日米の考え方の違いを改めて認識する機会となり、今後の学内での講義の進め方に大いに参考になる情報やスキルを習得することができた。指導教授の講義では、学部4回生と修士課程の講義を聴講したが、大学院学生には社会人の比率が高く、貴重な時間と授業料を費やしていることへの執着が肌で感じられた。また学部生への授業についても、講義時間中に何度も繰り返される教官からの質問に対する学生のレスポンスが良く、教官は常に学生の理解度を質問へのレスポンスから把握することに努めていた姿勢が印象的であり、講義に学生が積極的に参加する様子を目の当たりにし、日本の大学との決定的な違いを感じた。FD期間最後のクラスでは、質疑を含めて45分程度の模擬授業を行う機会を得た。残念なことに指導教官の専門領域とのマッチングが取れていなかったため、通常クラスの講義内容とは全く異なった模擬講義を行うこととなったが、予想に反して学生の関心が非常に高く、彼等の集中力には感心させられた。

 今回のFD期間中にフルトン校の教官をはじめとする方々との会話で認識したこととして、米国ではセメスター毎、そして講義コマ数毎に授業料を払って必要な科目を受講していると言う意識が高く、日本のように一律の授業料を納めてまずは多くの講義に登録し、各々の進捗を見ながら徐々に手を抜いていくという考え方とは決定的な違いを感じる。フルトン校での講義内容はレベル的には決して高いものではないが、個々の学生が講義に対して取り組む姿勢を見る限り、日本の大学での教育システムを改める必要があると感じた。

 また研修期間中には、指導教官の紹介で小職の専門分野に近いEngineering & Computer ScienceのDeanであるUnnikrishnan教授ならびにElectrical EngineeringのDepartment ChairであるShiva教授と話す機会があり、本学への留学生やインターンシップ学生の派遣に関して意見交換した。両教授との話でも再認識したことであるが、フルトン校は主に学部生の教育に重点を置いた州立大学であり、各教官の教育に対する意識が高い一方、大学院での専門的な研究に関してはスタンフォードやUCLA等の研究重視の大学にトップクラスの学生を輩出すれば良いとの認識である。フルトン校での充実した教育活動の背景には、学部教育を中心した人材育成に特化した大学のスタンスが反映されている。これを本学が置かれた状況と比較すると、本学が専門的な研究機関としての機能に加え、今後国際化も含めた教育機関として有効に機能するためには、教官の人的配置も含めて教育システムの整備が明らかに遅れていることを痛感した。

 今回の海外FD研修では、大学を離れて英語スキルの向上や、日米での教育スタイルの相違について考える時間を頂いた。本研修で習得した語学力や講義スキルを早速、後期からの講義で活用したいと考えている。また、さらに長期的な展望として、本学の国際化や学生教育に対し、その問題点や今後の取り組みの重要性を認識する貴重な機会を得た。最後に、本プログラムのリーダーであり、FD研修の機会を与えて頂いた金谷茂則教授、そして事務関係でご支援頂いた同研究室秘書の松本様に感謝致します。