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海外FD研修
第1回 FD研修
国際連携大学院FDネットワークプログラム
海外ファカルティ・ディベロップメント(FD)報告書
生命先端工学専攻 物質生命工学コース
准教授 藤内謙光

 3月9日より22日までの約2週間、私を含め6人の教員がファカルティー・ディベロップメントの第一陣としてカリフォルニア州立大学フルトン校を訪問した。今回のMissionは大学教員が英語による教授方法、教育法に関する能力を高め、授業や演習等を通して大学院博士課程の国際化を推進することである。

 初日、我々は大学に到着すると、一通りのオリエンテーションと大学施設の案内を受けた後、職員やメンター教授の紹介を兼ねた歓迎会に参加した。歓迎会では早速メンター教授(Esther Chen博士)と今後の方針についてディスカッションがあった。いよいよ研修の始まりである。

 研修は、1年生生物学に関する授業の見学から始まった。アメリカ学生の授業への関心、参加・学習意欲の高いことには非常に驚かされた。授業スタイルは、あらかじめ授業のカリキュラムに合わせて作られた独自の教科書をよく予習しておいて、授業中の多くの時間は質問と討議に費やされるといった形式である。学生は各々クリッカーという電卓ほどの装置を持っており、授業中に教員が質問した問題にボタンを押して答える(問題の一部は教科書にあり、予習時に解答している)。するとその答えは瞬時に集計・統計されプロジェクターに映し出される。そこで教員は学生を指名(ときには自ら)してディスカッションを始めるのである。このような授業スタイルは内容がさほど高度ではないときには非常に有効な手法であると思われる。ただ、授業に学生を参加させる手法としてぜひ私もこのIT機器を取り入れたいと思った。その他、教育システムの特徴としては、授業時間が日本と比べ少し短く(75分)、高校までのように同じ授業が一週間に2度あることである。これは集中的に内容を理解するのに非常に役立つと思われる。もうひとつ全体を通した印象は、どの教員も老若男女問わず上手にITを使いこなし授業に取り入れている。ときにはインターネットにアクセスしたり、YouTubeから動画をダウンロードして実験操作や反応中の分子の動きのアニメーションを閲覧する。

 さらに今回の研修では、「ホームルーム」とよばれる教育全体に対する取り組みや、考え方を参加者全員にディスカッションする時間が一番多くとられており、これまで教育学や教育手法を学ぶ機会の無かった私にとって極めて新鮮かつ有意な授業であった。さらには「発表技術」「発音」のクラスが役に立ったと思われるが、惜しむらくは「発音」の授業が3回しかなく、もっと多くても良いと思った。さらにワークショップでは授業の直接的なテクニックを習った。最終的にメンター教授の授業を3度見学し、それまでの授業で得た経験と知識を活かし、メンターの授業で30分間の授業発表を行った。日本でのこれまでのものとは違い、インタラクティブな授業を行えたと思う。ただ、メンターは分子生物学の教授であり、私の専門とは大きく異なっていたことから、相互の内容理解と最終授業の準備に手間取った。今後は事前のUCSFとの協議を密にする必要があると思われる。

 以上、今回私は、アメリカ流の教育技術および教育法、教育思想を学んだ。英語で授業をするからといって、日本でこれらの方法がすべて適応できるとは思わないが、多くの部分を取り入れることができる。さらに、英語授業だけでなく、日本語の授業にも応用できるテクニックや手法があり、そちらの方でも大変役立つと思う。

 後日、新聞で任天堂DSを使う授業の提案がなされていた。この使い方は我々が見学したときに使っていたクリッカーに良く似ており、うまく利用すれば有効なツールとして用いることができるだろう。