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海外FD研修
出張報告
カリフォルニア州立大学フルトン校(California State University, Fullerton, CSUF)出張報告
平成20年11月18日
金谷茂則

 生命先端工学専攻は、文科省の大学院教育改革支援プログラム(大学院GP)(Support Program for Improving Graduate School Education)を平成20年度から3年間の予定で実施している。課題名は国際連携大学院FDネットワークプログラム(International Collaboration Program of Graduate School for Faculty Development)である。本教育プログラムでは、大学院教員の海外ファカルティ・ディベロップメント(FD)研修、E-ラーニングの共有化、学生の海外インターンシップ、授業のHP公開、英語による大学院博士前期課程の講義、演習、研究指導などを実施することにより、大学院教員の英語による教授方法・教育方法を高め、大学院博士前期課程の国際化を推進することを目的としている。

 

 大学院教員の海外FD研修を実施するためには、まず研修先を決める必要がある。米国にはFD研修プログラムの充実している大学は数多くある。しかし、今年度は本プログラムの初年度ということで開始時期が10月と遅いために、FD研修先として適している大学を調査するための時間があまりない。そこで、2004年と2006年に奈良先端科学技術大学院大学の若手教員を受け入れて2週間のFD研修を実施した実績のあるカリフォルニア州立大学フルトン校(California State University, Fullerton, CSUF)がFD研修先として適しているかどうか調査する目的で、平成20年11月12日(水)から17日(月)まで米国ロサンゼルスに出張した。奈良先端大ではノースカロライナ州立大学シャーロット校にも教員を派遣してFD研修を行なっているが、CSUFを研修先の第一候補として選んだ理由は、FD研修に参加した奈良先端大教員の評判が良かったことと、西海岸で日本に近いことなどによる。

 

 CSUFはロサンゼルス(LA)の南方約50 KmにあるFullerton(フルトン)市にある。ディズニーランドから車で10分ほどのところである。このあたりはOrange County(オレンジカウンティ)エリアで、ほとんど雨が降らず年中温暖で米国内で最も気候の良い地域として有名である。筆者が訪問した日も雲一つない快晴で、朝夕は涼しく、日中も気温が30度を超えたにもかかわらず湿度が低いせいか爽やかで、とても快適であった。フルトンは人口約14万人足らずの小さな都市で、3人に一人以上は学生または教員という大学の街である。フルトンに行くためにはLA国際空港からタクシーを利用する。筆者はLA市内からフルトンまで鉄道を利用して往復したので、LA国際空港からフルトンまでタクシーでどのぐらい時間と料金がかかるのかわからない。しかし、渋滞がなければ所要時間約40分、料金60-70ドルとのことである。LA市内から鉄道を利用する場合は、Union Station(ユニオンステーション)が起点になる。ユニオンステーションには地下鉄(メトロ)が乗り入れているので、市内であればどこからでもアクセスできる。ユニオンステーションからフルトン駅までの鉄道の所要時間は35分、料金は6.75ドルである。タクシーの場合、料金が約80ドルと高いだけでなく、渋滞すると1時間半ほどかかるので、LA市内とフルトンを往復する場合は鉄道がおすすめである。ただし、列車は1時間に1本程度しかないので、あらかじめ駅で時刻表を確認しておく必要がある。また、ユニオンステーションと違い、フルトン駅ではタクシーが待機していないので、電話でタクシーを呼ぶかバスを利用するしかない。フルトン駅とCSUFキャンパスを結ぶバスが運行されているとのことなので、路線番号さえ覚えておけばバスを利用するのが便利である。フルトン駅からCSUFまで約5 Kmである。

 

 CSUFは23のカリフォルニア州立大学の中では最も大きな州立大学で、学生数は37,000人に達する。ほとんどが文系で、特に経済とビジネス分野に強い。理系もあり化学、生物、物理分野の教員は多数いるが、学部教育を主として担当しているため、研究面で華々しい成果を上げているわけではない。ただ、CSUFはこの10年間で学生数が約2倍に増加するなど近年急速に拡大・発展している。CSUFはファカルティ・ディベロップメント(FD)にも力を注いでおり、Faculty Development Centerを設置するなど、他の州立大学と連携して様々なFDプログラムを開発している。国際交流にも熱心で、特に中国から毎年100名を超える学部学生を短期で受け入れて教育研修を行なっている。ちなみに、University of WashingtonとUniversity of California, Santa Barbaraが大阪大学の学生を受け入れて実施している夏期語学研修をCSUFも実施しているが(2009年は7/6-7/31の4週間)、費用は研修費と朝食付きの宿泊費合わせて3500ドルである。旅費、保険、食費を加えると60万円ぐらいになる。4人以上であれば受け入れてもらえる。CSUFの教育、研究の詳細はweb site(www.csufextension.org)を参照されたい。米国の大学は研究に重点を置く大学と教育に重点を置く大学に大きく二分されるが、CSUFをはじめカリフォルニア州立大学はすべて後者である。前者はUniversity of California, San Francisco(UCSF)、University of California, Los Angels(UCLA)、University of California, Berkeley(UC Berkely)、University of California, San Diego(UCSD)などで、これらは州立大学の上位に位置し教員の質も学生の質も高い。また、カリフォルニア州には州立大学の下位校として、日本の短大に相当する修学期間2年のCommunity College(CC)もある。つまり、カリフォルニア州の大学は、UC、CSU、CCの3つのクラスに分かれる。

 

 今回訪問したのはCSUFのUniversity Extended Education(UEE)という組織で、International Programs, AsiaのDirector であるMs. Lisa Xue(右端)とExtension ProgramsのDirector であるMs. Carol A. Creighton(左端)から、FD研修プログラムを2週間実施した場合の内容、スケジュール、費用などについて説明を受けた。また、UEEのDeanであるDr. Harry Norman(右から2番目)と会食した。さらに、Faculty Development CenterのDirector であるProfessor Tony RimmerにCSUFにおけるFDの取り組みについて紹介して頂いた。International Programs, AsiaのスタッフであるMr. Arthur WangとMr. Robert J. Haltermanにはフルトン駅への送迎や学内の案内をして頂いた。なお、UEEは大阪大学であれば国際交流部に対応すると思われる。International Programs, AsiaとExtension ProgramsはいずれもUEEの部署の一つである。大阪大学から教員を受け入れてFD研修を実施するのも、海外から学生を受け入れて語学研修を実施するのもこれらの部署である。

 

 CSUFにおけるFD研修プログラムは、ワークショップ、発表練習、授業参観、および関連分野の教授による個別指導から成る。最終的に、その教授の講義の一部を担当するという形で、30分程度ではあるが、CSUFの学生に対して実際に講義を行ない、研修の効果を評価する。研修に参加した教員にとって、通常の授業の一部として米国の学生に英語で講義することは大変大きな負担になると思われるが、そのような機会は滅多にないので逆に大変貴重な経験になると思われる。今回予定しているFD研修プログラムの研修項目、シラバス、研修スケジュールをそれぞれ添付する。研修期間は2週間で、月曜日に日本を出発し(同日CSUF到着)、翌週土曜日にCSUFを出発する(日曜日に日本到着)。到着した翌日から研修は始まるが、一日目(火曜日)は学内見学、オリエンテーション、歓迎会、研修生の語学力の評価で終了する。その後、研修生の研究分野に応じて研修生を1:1で個別指導する教授が決まる。二日目(水)からはワークショップや発表練習に全員で参加するとともに、それぞれ異なる教授の授業を見学しその個別指導を受ける。最終日の金曜日には修了式を行ない、修了証書を受け取る。土、日曜日は研修がないので、カリフォルニアの自然を満喫できる。近くのビーチで泳いでもいいし、少し足を延ばせばスキーもできる。ディズニーランド、ユニバーサルスタディオ、ハリウッドで遊んでもいいし、バスケットボールや野球を観戦しても良い。研修に差し支えない程度にできるだけ楽しんで欲しい。今回、CSUFを訪問して、UEEのスタッフが海外、特にアジアの学生や教員の教育研修に非常に熱心に取り組んでいることが良くわかった。私は、CSUFにおけるFD研修が成功することを信じている。